2024年08月09日

高校生に対する金融教育が必修化 !
具体的な学習項目について解説

#授業

高校生に対する金融教育が必修化!具体的な学習項目について解説

2022年4月から高校での金融教育が必修化されました。具体的な学習項目を知りたいと考えている方は多いでしょう。
金融庁が発表した資料では「家計管理とライフプランニング」「お金の使い方」「お金の貯め方・増やし方」など6項目が取り上げられています。

本記事では、金融教育の学習項目、高校で金融教育が必修化された背景、金融教育の実践事例などを解説しています。
以下の情報を参考にすれば、金融教育の全体像を理解できるはずです。学習項目などが気になる方は参考にしてください。

高校生に対する金融教育(金融経済教育)の学習項目

新学習指導要領に対応した授業を行うため、金融庁が作成した「高校生のための金融リテラシー講座」によると、金融教育(金融経済教育)の学習項目は次の6つです。

  • 家計管理とライフプランニング
  • お金の使い方
  • お金の貯め方・増やし方
  • お金の備え方
  • お金を借りる仕組み
  • 金融トラブルの防ぎ方

各項目について解説いたします。

家計管理とライフプランニング

「高校生のための金融リテラシー講座」で家計管理は次のように定義されています。

家庭生活を営むための収入と支出の運営を管理すること
引用:金融庁「高校生のための金融リテラシー講座

したがって、収入・支出・貯蓄について学んだり、夢をかなえるためお金をどのように準備するか学んだりします。

「高校生のための金融リテラシー講座」でライフプランニングは、次のように定義されています。

人生の希望や計画を具体的に時系列で描くこと
引用:金融庁「高校生のための金融リテラシー講座

働き方や雇用形態による年収の違い、人生の三大費用(教育・住宅・老後)、生涯の収支バランスのイメージなどを学びます。これらはライフプランニングを描くうえで必要になる知識です。

お金の使い方

お金を賢く使う知識を学びます。具体的な学習内容は次の通りです。

  • ニーズ(必要なもの)とウォンツ(欲しいもの)の区別
  • 家計管理のポイント
  • キャッシュレス決済のメリットと注意点

例えば、ニーズとウォンツの区別ではニーズ(必要なもの)を優先することなど、家計管理のポイントでは収支を黒字にするため、収入から貯蓄分を減じて支出をやりくりすることなどを学びます。

お金の貯め方・増やし方

基礎編と応用編にわけて資産形成について学びます。具体的な学習内容は、利子と金利、単利と複利、金利の推移、金融商品の3つの基準(収益性・安全性・流動性)、主な金融商品の特徴、金融商品のリスク、リスクとリターンの関係などです。

応用編ではより実践的な知識を学びます。例えば、リスクを軽減する方法として、長期投資・積立投資・分散投資などの解説が加えられています。これらを通して、目的に合わせた金融資産の活用、金融資産を活用した資産形成についての理解を深めます。

お金の備え方

社会保険と民間保険について学びます。保険は加入者が公平にお金を出し合ってさまざまなリスクに備える仕組みです。
社会保険には年金保険・医療保険・介護保険など、民間保険には生命保険・損害保険があります。
これらについて学ぶとともに、ライフプランに合わせて社会保険・資産形成・民間保険を組み合わせて活用することなどを学習します。

お金を借りる仕組み

お金を借りることが、将来の収入の先取りであることやお金を借りると基本的に利子が発生することなどを学びます。クレジットカードについて学習する点もポイントです。

具体的には、クレジットとキャッシングにわかれること、いずれも借金になること、リボ払いは支払う金利が大きくなりやすいことなどを学びます。奨学金が取り上げられている点も見逃せません。奨学金の種類と仕組み、計画的な返済などについて理解を深めます。

金融トラブルの防ぎ方

金融トラブルの具体例とこれらを遠ざける方法、トラブル遭遇時の対処法(民法・消費者契約法・特定商取引法)などについて学びます。
具体例として、マルチ商法(ネットワークビジネス)、友達付き合い、SNS個人間融資など、高校生にとって身近な金融トラブルを取り上げている点がポイントです。
相談窓口を紹介している点を含め、実践的な内容になっているといえるでしょう。

高校生が金融教育を受ける必要性

高校生に対する金融教育が必修化!具体的な学習項目について解説

続いて、金融教育の必要性について解説します。

成人年齢が18歳になる

022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられました。これを受けて、18歳になると法定代理人(親権者など)の同意を得なくてもクレジットカードを作ったり、ローンを組んだり、携帯電話を契約したりできるようになります。成人が結んだ契約は未成年者取消権を行使できないため、法定代理人の同意を得ていなくても取り消せません。

独立行政法人国民生活センターには、20歳代の相談が多く寄せられています。未成年者に比べ契約金額が高いこと、美容に関する相談や儲け話に関する相談が多いことが特徴です。成人年齢が引き下げられると、10歳代もこれらのトラブルに巻き込まれる恐れがあります。このようなリスクに対処するため、高校生から金融教育を受けておく必要があるのです。

参照:独立行政法人国民生活センター「若者の消費者トラブル

金融リテラシーを身に着ける

OECD 金融教育に関する国際ネットワークは、金融リテラシーを以下のように定義しています。

金融に関する健全な意思決定を行い、究極的には金融面での個人の幸福を達成するために必要な、金融に関する意識、知識、技術、態度および行動の総体

引用:OECD/INFE「金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則

金融リテラシーが高いと、経済的に自立したより良い暮らしを送りやすくなります。
家計を適切に管理することや計画的に資金を準備すること、万が一のリスクに備えること、金融トラブルを回避することなどができるからです。生涯にわたり個人の幸福を追求できるように、高校生から金融について学んでおく必要があると考えられています。

高校生が受ける金融教育の実践事例

高校生に対する金融教育が必修化!具体的な学習項目について解説

高校ではどのような金融教育が行われているのでしょうか。ここでは、金融教育の実践事例を紹介します。

社会科・公民科

「現代社会 政治・経済」において「もしもお金がなかったら」をテーマに、アクティビティを通してお金の役割を考える授業を行った事例です。主な狙いは以下の通りです。

  • 貨幣の機能について関心を高める
  • 貨幣の流通量で物価が変動することを実感させる
  • 貨幣の重要性を気づかせる
  • 中央銀行の役割、金融政策の基礎知識を身に着けさせる

授業で取り組むアクティビティは以下の2つです。

【アクティビティ➀】

  • お金なしで物々交換をする
  • お金を投入するとどうなるか観察する

【アクティビティ②】

  • オークションをする
  • 貨幣量を倍にしてオークションをする

アクティビティ➀で交換手段としての貨幣の役割、アクティビティ②で貨幣数量説を学びます。体験を通してお金の役割などを学ばせている点が本授業の特徴です。

参照:知るぽると 金融広報中央委員会 「(2)社会科・公民科の実践事例

家庭科

家庭総合において「ライフステージごとのリスクと保障を考える―経済設計の必要性や社会保障・保険等の内容を知る―」をテーマに授業を行った事例です。主な狙いは以下の通りです。

  • ライフステージごとのリスクとその軽減のための社会保障・保険等を気づかせる
  • 保険商品選択における意思決定の必要性を考えさせる

具体的には、ライフステージごとのリスクをプリントに記入させる、グループごとに保険を選んで資料をもとにその内容を検討させるなどの取り組みを行っています。気づいた点などをプレゼンテーション形式で発表させている点もポイントです。

参照:知るぽると 金融広報中央委員会 「1.生活設計・家計管理に関する分野の実践事例

総合学習

総合的な学習の時間において「『甲商デパート』起業家を目指す―実践を通して経済活動を理解し、「経営」について主体的に学ぶ-」をテーマに授業を行った事例です。
甲商デパートは、生徒が仕入れから販売まで行う商業教育実践の場です。主な狙いとして以下の点などがあげられています。

  • 金融・経済に関する正しい知識の習得
  • 正しい金銭感覚、豊かな生活感覚の習得

具体的な取り組みとして、取り扱いたい商品と経営方針の発表、取り扱いたい商品と経営方針の決定などが行われています。実践を通して、正しい知識・金銭感覚などを学ばせる点が特徴です。

参照:知るぽると 金融広報中央委員会 「4.キャリア教育に関する分野の実践事例

まとめ

2022年4月から高校で金融教育が必修化されました。背景には、成人年齢の引き下げなどがあると考えられています。
具体的な学習内容は「家計管理とライフプランニング」「お金の使い方」「お金の貯め方・増やし方」などです。
例えば、お金の貯め方・増やし方では、主な金融商品の特徴などについて学びます。金融教育で学ぶ知識は、生涯にわたり役立つ内容を含みます。
この記事で紹介した実践事例などを参考に、実践的かつ体系的な授業を行うことが重要といえるでしょう。

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